服装が組織内の人々の意識や行動に一定の影響を及ぼしうることは、企業制服に関する研究によって以前から示されている。昨今はドレス・コードを緩和して制服の着用を義務付けない傾向が産業界に広まりつつあるが、企業が組織として制服を採用するメリットや従業員が制服を着用するメリットが全面的に消失したわけではない。一部の業種においては、制服が必要不可欠な場合もある。本稿では、制服がその職務遂行上において重要な意味合いを持つと考えられる代表例として、警備会社・警備員を分析対象に取り上げる。その上で、警備員の制服そのものが、従業員としての警備員自身に与える影響、職務遂行時の周囲の人々に与える影響、雇用側の警備会社に対する影響を調査から明らかにする。実際に調査データを使って分析した結果、着用する制服への肯定感が高い警備員は離職しにくい傾向をもつこと、さらに制服への肯定感が高い警備員はお客様を含めた周囲の人々との対人関係を良好に形成でき、その良好な対人関係のもとで人材の定着が促される傾向があることがわかった。これらの結果は、高い離職率に悩んでいる警備業界に対して、制服による人材定着効果の存在を示唆している。