2019 年 19 巻 1 号 p. 9-13
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーは,進行が比較的緩徐である遺伝性筋疾患である。本報告の目的は,顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの症例に対し長期的な徒手理学療法介入を行い,その効果について検討することである。 本症例は,立位・歩行時の腰背部痛および背臥位での呼吸困難感の主訴がみられた。胸椎後弯腰椎前彎位姿勢が顕著で,歩行時左右立脚期にDuchenne-Trendelenburg現象が認められた。そこで姿勢の修正を目的に,徒手理学療法に加えて自主トレーニングの指導など体幹に対する介入を複合的に行なった。その結果,主訴(呼吸困難感・腰痛)の軽減および歩容の改善が認められた。進行性筋疾患の場合,低下した筋機能をどこまで高められるかが課題とな る。本症例では,体幹に対する段階的な複合的介入が有効であったと考えらえる。