2021 年 21 巻 1 号 p. 9-13
臨床推論の能力は徒手的理学療法の効果を左右する大きな因子である。臨床推論の枠組みは大きく分けて,medical modelとsigns and symptoms model(SSモデル)がある。Medical modelにおいては,病態解剖学的diagnosisの確立が,予後予測や治療を決める上で必須であると考える。一方で,SSモデルは病理解剖学的なdiagnosisを必要とせずに,パターン認識や臨床所見や症状に基づいた仮説演繹推論によって介入を計画し,反芻していく。SSモデルの臨床推論能力を高めることは,本邦における卒前・卒後教育で今後重視されていくと考えられる。そこで,本稿ではSSモデルの臨床推論能力を高めるのに有益であるstratified care modelを取り上げた。まず,stratified care modelとはなにかについて概説し,腰痛に対するKeele STarT Backスクリーニングツールについても簡単に紹介した。そして,stratified care modelにおける研究課題について概説した。