抄録
私たちは現在「熱帯雨林の長期生態研究」というテーマに、1990年代はじめから、サラワクで取り組んでおります。その成果の一端をご紹介しながら、私たちが考えている生態系の保全とは何かということをご紹介したいと思います。 熱帯雨林がどういう現状にあるのかということをまず最初に簡単に申しますと、第一に熱帯雨林は地球上で生物多様性が最も高い存在であります。生物多様性が高いということは潜在的な資源価値が高いということです。しかし第二には生物種の存在最も脅かされやすいところでもあり、そういう意味で、熱帯林は保全と修復をする必要があるということになります。熱帯雨林がどのように多様なのかということを森林のタイプでみると、低地熱帯雨林、常緑季節林、熱帯半常緑林、落葉季節林、サバンナ疎林、それから山へ上がりますと低山地フタバガキ林、カシクス林、シャクナゲ林、雲霧林またはコケ林といったようなものがみられます。土壌の性質によってはピース林、淡水性の泥炭湿地林、汽水から塩水のマングローブ林などがでてきます。これら全部が熱帯に出てくる森林のタイプですが、今はその中で低地熱帯雨林について主に考えたいと思います。