抄録
マングローブは熱帯・亜熱帯の海水の出入りする沿岸域や河口域に広がる樹木群の総称で、塩生植物である。マングローブ地域は生物多様でしかも生物生産性の極めて高い生態系として地球規模でその重要性の認識が増し、また耐塩性の遺伝資源としても注目されている。 今、東南アジアを始めとするマングローブ森林は減少し続け、地球上には約1,800万haのみである。タイのマングローブ森林減少原因は、燃料を確保するための過剰伐採、エビ養殖池への転換、農地開発、工業団地用地への転換、スズ採掘による破壊などとされる。タイ国のマングローブ森林はこの30年間で半減し、約17万haである。近年になり、タイ国ではマングローブ生態系の重要なことの認識が高まり、保全保護への取り組みが開始され始めている。 本報告は、タイ国南部Nakhon Si Thammaratに広がる放棄エビ養殖池と沿岸線への大規模マングローブ植林による生態系の修復への歩みとプロジェクト実施について述べる。本プロジェクトはマングローブ修復のモデルとして、東南アジアをはじめとする修復を必要とする地域への技術移転を最終目標としている。