2022 年 100 巻 2 号 p. 293-320
Goddard Convective-Stratiform Heating (CSH) アルゴリズムは、熱帯降雨観測衛星(TRMM)や全球降水観測衛星(GPM)のミッションにおいて、雲や雲システムに伴う潜熱プロファイルを推定するために利用されてきた。CSHアルゴリズムでは、雲解像モデルを用いて潜熱プロファイルをシミュレーションし、実際の衛星データに適用するルックアップテーブルを作成する。本論文では、現在のCSH V6と従来のCSH V5との相違点・類似点について説明する。雲解像モデルの解像度と対流性層状性分類法が潜熱放出の構造やプロファイルに与える影響を明らかにするため、雲解像モデルによる長期積分シミュレーションを行った。 TRMM と GPM のレーダー・マイクロ放射計複合アルゴリズムによる地表雨量とそれに関連する降水特性変数が CSH アルゴリズムの入力となっている。
CSH V6で得られた熱帯・亜熱帯地域の潜熱プロファイルは、対流域では加熱、層状域では冷却の上方で加熱という典型的な特徴を示している。潜熱は直接測定することはできないため、CSH V6アルゴリズムの性能は、鉛直方向に積分した潜熱量(等価地表雨量)とTRMM/GPM データから得られる地表雨量を比較することで検証している。CSHの3ヶ月帯状平均の等価地表雨量は、熱帯収束帯で衛星データの地表雨量と良く一致し、海洋上では非常に精度が良い。一方で、熱帯・亜熱帯の陸域では過大評価の傾向にある。CSHの3ヶ月平均等価地表雨量は、衛星データ雨量との間に局所的な相違があるが、大きな水平解像度(CSHの標準グリッドである0.25°×0.25°から0.5°×0.5°または1.0°×1.0°)で領域平均することで平滑化できる。 CSH等価地表雨量は、GPMの地表雨量と比較して、弱い雨が多く、強い雨が少ない。