2022 年 100 巻 3 号 p. 523-532
地域的な極端現象の過去から将来への連続的な変化を調べるために、20km全球大気大循環モデル(AGCM)、および60kmAGCMと20km領域気候モデル(RCM)力学的ダウンスケーリングを用いて、20世紀中頃から21世紀末までの連続したシミュレーションを行った。AGCMによる代表的なシナリオについてのシミュレーションは高解像度モデル相互比較プロジェクト実験の手法に従った。また、60km AGCMおよび20km RCMダウンスケーリングでは4つのシナリオを用いたアンサンブル実験を行った。
全球平均の年最大日降水量(Rx1d)増加率は、シナリオによらず、全球平均の地上気温(SAT)上昇とほぼ比例していた。この関係は低解像度の気候モデルでの結果と整合的で、それより高解像度のモデルでも有効であることを示している。日本の陸域で平均したRx1dとSATについても、10年移動平均で見れば、20km AGCMと20km RCMでよく似た相関関係が見られた。しかし60km AGCMでは、日本の陸域の格子点数が不十分なためノイズが大きく、関係は明瞭ではなかった。これは、アンサンブル実験を使用しない場合には、日本の陸域といった地域スケールのRx1dの連続的な変化は20km程度の解像度により初めて表現可能であることを示唆している。