2023 年 101 巻 2 号 p. 149-169
第3世代気象庁/気象研究所結合予測システム(JMA/MRI-CPS3、以下CPS3)を開発した。このシステムは第2世代予測システム(CPS2)以来の大規模更新版である。CPS3は、大気・陸域・海洋・海氷の各予測モデルと、これらのモデルに必要な初期化システムで構成されている。再予報では、気象庁第3次長期再解析(JRA-3Q)が大気初期値と、陸上・海洋・海氷解析のための外部強制力を与える。現業予報では気象庁の現業全球大気解析とJRA-3Qを併用することにより、ほぼリアルタイムでシステムの初期化を行う。陸面モデルは、全球大気解析で駆動したモデル単体積分の結果を初期値に用いる。海洋・海氷モデルは、水温・塩分・海面高度に対して新たに開発した4次元変分法解析と海氷密接度の3次元変分法解析を組み合わせた全球海洋データ同化システム(MOVE-G3)により初期化する。CPS3の予測モデル各構成要素の解像度は旧システム比で約2~4倍となり、大気・陸面モデルは水平約55km・鉛直100層、海洋・海氷モデルは水平0.25×0.25度・鉛直60層に設定している。CPS3は大気の物理過程をCPS2から大きく改良しており、マッデン・ジュリアン振動の東進や、北大西洋の冬季ブロッキング高気圧、エルニーニョ-南方振動時の大気-海洋結合変動など、季節内~季節規模の変動をよりよく表現できるようになっている。1991年から2020年までを対象とした再予報実験では、CPS3がCPS2より高い予測精度を持つことが示されている。また、現業運用スケジュールを見直し、5メンバーアンサンブル予報を毎日更新するように変更することで、モデル出力の利便性を向上させている。