気象集誌. 第2輯
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メソスケール観測システムシミュレーション実験による静止衛星搭載ハイパースペクトル赤外サウンダのインパクト評価
藤田 匡岡本 幸三瀬古 弘大塚 道子大和田 浩美林 昌宏
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2023 年 101 巻 5 号 p. 371-390

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抄録

 豪雨事例を含む2017、2018、2020年梅雨期について、静止衛星搭載ハイパースペクトル赤外サウンダ(GeoHSS)の領域数値予報におけるインパクトを調査した。大気の疑似真値として欧州中期予報センター第5世代再解析(European Centre for Medium-Range Weather Forecasts Reanalysis v5; ERA5)を用い、再解析に基づく観測システムシミュレーション実験(OSSE)を行った。GeoHSSのスペクトル特性を考慮した1次元変分法により、気温、及び、湿度の疑似観測を生成した。ラジオゾンデ観測による検証では、様々な高度、予報時間で改善がみられた。風の疑似観測は同化していないものの、同化サイクルや予測を通して風にもインパクトが及んだ。降水予測の検証も改善する傾向であり、予測のリードタイムをのばす効果が目立った。事例を調査したところ、梅雨前線に伴う低気圧や上層のトラフの予測の改善に伴い、主に長い予報時間で降水予測に改善がみられた。これらは、晴天域に広く分布する疑似観測による大きいスケールのインパクトが、データ同化サイクルや予測を通して降水域に伝播したものとみられる。一方、本実験における空間解像度が限られているため、小さいスケールの局地的な豪雨については、短い予報時間でも十分な予測が得られなかった。また、実験の結果、大気下層の情報の抽出が重要であること、上層の環境場へのインパクトは雲域での観測データ利用の影響を受けることが示唆された。

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©The Author(s) 2023. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.
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