気象集誌. 第2輯
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複数の衛星測器観測による1978-2017年のオゾン全量データのバイアス補正
直江 寛明松本 隆則上野 圭介眞木 貴史出牛 真竹内 綾子
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2020 年 98 巻 2 号 p. 353-377

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抄録
 この研究では、利用可能な20種類のLevel2衛星観測オゾン全量(TCO)データを40年間(1978-2017)分取得し、結合TCOデータセットを作成する。20種類の個々のTCOデータセットと結合したTCOデータは、ドブソンとブリューワー分光光度計による地上観測に対して補正を行う。ここでは2種類のバイアス補正法を用いる:時間方向に線形単回帰を行う補正法と、時間、太陽天頂角、オゾンの有効温度を説明変数とした線形重回帰による補正法である。全ての衛星データセットで地上観測との差は2-3%の範囲にある。しかし、Total Ozone Mapping Spectrometer(TOMS)/Earth Probe で校正が劣化した期間のデータや、NOAAが提供している Ozone Mapping and Profiling Suite (OMPS)の観測初期のデータは品質が劣化していることがわかった。一方、NASA提供のOMPSデータと地上観測との差は極めて安定している。Global Ozone Monitoring Experiment/MetOp-A and -B では、アルゴリズム更新時に地上観測との差に不連続があり、約8DU に達している。20種の衛星観測データを各グリッドで平均して作成した結合TCOデータセットについて、重回帰を用いた補正法によるTCOのトレンドと補正なしのそれとを比較すると一般的に低緯度で正になるが、これは前者においてオゾンの有効温度が低い地域で、正の補正がなされるからである。重回帰を用いた補正法によるトレンドには明瞭な季節依存性と緯度依存性がみられるが、時間だけの単回帰による補正法の結果に季節依存性と緯度依存性はみられない。結合TCOデータセットの平均平方二乗差は、補正前の8.6 DU から、単回帰と重回帰による補正後いずれにおいても8.4 DUへ減少している。したがって、我々のバイアス補正法を用いた結合TCOデータセットは、時間方向に一様かつ高分解能であり、トレンド解析および長期再解析への同化データとして適している。
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© The Author(s) 2020. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
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