抄録
偏波間位相差(ΦDP)と偏波間位相差変化率(KDP)から降雨パラメータを推定する際に問題となりうる信号を検出するアルゴリズムを開発した。まずΦDPに含まれるレンジゲート単位の変動を除去した後、雨滴の水平偏波のレーダー反射強度(ZH)とKDPとの経験的関係に基づくフィルタリングを施した。アルゴリズムの検証を、海大陸研究強化年(YMC)パイロット集中観測期間中(2015年11月23日~12月17日)に研究船「みらい」に設置されたCバンド二重偏波レーダーによって観測されたスマトラ沖の降雨データを用いて行った。二次エコーとビーム内不均一性の影響で、観測データにはΦDPに十数キロメートル単位の摂動が存在し、それによって正および負のKDPのバイアスが生じる。これらのΦDPとKDPのノイズを、この新しいアルゴリズムは効率的に検出・除去することに成功した。また、ZHの値が比較的低い場合のKDPの標準偏差も大幅に低減された。結果、KDPからの雨量推定精度が改善された。これらの結果は、開発したアルゴリズムが、外洋のみならず海陸混合域においてもデータの品質を効率的に管理できることを示した。