気象集誌. 第2輯
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化学気候モデルで計算されたオゾン準二年振動におけるオゾン消滅反応の分離・定量化
柴田 清孝Ralph LEHMANN
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2020 年 98 巻 3 号 p. 615-636

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抄録
 気象研究所の化学気候モデルで計算されたオゾン準二年振動(QBO)におけるオゾン消滅の反応経路とその変化率をパスウェイ解析プログラム(PAP)を用いて解析した。解析対象とした化学システムはNOx、HOx、ClOx、Ox、BrOxなどの重要な触媒サイクルであり、これらがオゾン消滅率に与える寄与を定量評価した。高度10 hPaと20 hPaにおけるすべての触媒サイクルによるQBO振幅はオゾンの年平均全消滅率の,それぞれ4% と14%に相当していた。オゾンQBOにおけるオゾン消滅率に対するそれぞれの触媒サイクルの寄与は以下の通りであった:NOxサイクルは全消滅率のQBO振幅の最大の割合(50-85%)、HOxサイクルは高度30 hPa以下で二番目の割合(20-30%)、20 hPa以上で三番目の割合(約10%)、Oxサイクルは高度30 hPa以上で三番目の割合(5-20%)、20 hPa以上で二番目の割合(約10%)、ClOxサイクルは四番目の割合(5-10%)、BrOxサイクルは殆ど無視できる程であった。NOxとOxサイクルがQBO振幅に関連したオゾン消滅率に与える寄与は、各サイクルの年平均のオゾン消滅率への寄与に比べて、それぞれ10%、20%の違いがあった。高度20hPaにおけるオゾンQBOは主に輸送過程によって駆動されており、これが化学的なオゾン消滅率にも影響を与えていた。一方、高度10 hPaでのオゾンQBOはNOxよる化学反応、および[O]/[O3]比の温度依存性(化学反応O + O2 + M → O3 + Mの温度依存性の結果)の両方で駆動されていた。さらに、高度10 hPaのオゾンQBOはその上空のオゾン総量(オゾン光解離を通した[O]/[O3]比と酸素光解離を通したオゾン生成に関与)にも影響されていた。
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© The Author(s) 2020. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
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