気象集誌. 第2輯
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北西太平洋上の強いモンスーントラフパターンにおける熱帯低気圧の発生に適した領域の位置
Xi CAO Renguang WUNa WEIYifeng DAI
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2020 年 98 巻 3 号 p. 637-654

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抄録
 再解析データと数値実験により、北西太平洋(WNP)上の強いモンスーントラフパターンにおける熱帯低気圧の発生過程を調べた。コンポジット解析により、モンスーントラフが北西から南東の方向に伸びるとき、WNPの中央部(東経130~165度)においてより多くの熱帯低気圧が発生する可能性が高く、西部(東経120~130度)および東部(東経165~180度)で現れる熱帯低気圧は少ないことが示された。同程度の弱い人工的な渦をモンスーントラフ内の8つの異なる領域に挿入した数値実験により、モンスーントラフが東西に伸びているとき、東経140~160度の中央部(特に150~155度)において弱い熱帯擾乱が急速に発達する傾向があり、東経165~170度付近での発達は緩く、東経120~137.5度付近では発達しないことが示された。この数値実験の結果は、再解析データの解析結果と整合する。WNP西部における熱帯低気圧発生の抑制は、下層の海洋からの水分と熱(顕熱および潜熱を含む)の減少によるものである一方、WNP東部においては上層の大きな鉛直シアーと乾燥した大気状態が熱帯擾乱の発達の度合いを減少させる。
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© The Author(s) 2020. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.
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