2018 年 26 巻 2 号 p. 31-46
生産と販売はともに企業活動にとって重要な領域である.歴史的に2つの領域を比較すると,管理会計の発達は,生産職能で顕著である.販売職能における管理会計(以下,マーケティング管理会計)の発展が遅れたのは,販売プロセスに関する情報が得られなかったためである.
近年の環境の変化にともなって,マーケティング実務が大きな変貌を遂げている.従来のマーケティング管理会計では,予算管理や販売セグメント別の収益性分析によって,プロセスのインプットとアウトプットをコントロールすることによって,販売プロセス全体を間接的に管理するしかなかった.最近の大きな変化は,顧客動向を直接追跡できるようになったことである.本稿では,マーケティング管理会計はいかに変貌し,新たにどのような課題に直面しているかについて検討する.