気象集誌. 第2輯
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ユーラシア大陸東岸の地形強制に対する寒気内のメソスケール低気圧発生の応答
田村 健太佐藤 友徳
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J-STAGE Data 電子付録

2020 年 98 巻 6 号 p. 1261-1277

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抄録

 日本海北部では寒気内のメソスケール低気圧(PMC)が頻繁に発生する。本研究では、この地域のPMCの発生に及ぼす地形の影響を36冬期にわたる長期間の数値シミュレーションを用いて調査した。感度実験の結果、ユーラシア大陸東端の山岳地帯を除去すると、日本海北部の一部でPMCの発生が減少することが分かった。例えば、北海道西岸沖では山岳地形が無くなるとPMCの発生が著しく減少するのに対し、間宮海峡におけるPMCの発生は変化しなかった。合成解析によると、この結果は山岳地形の除去に対する海上風の地域的な応答の違いに起因していると考えられる。山岳を除去した実験では、大陸からの寒気吹き出しが日本海に直接流入し、北海道西岸沖に強い西風をもたらす。その結果、PMCはより早く、成熟前に上陸する傾向が見られた。また、一様な西風は風の水平シアを弱めるとともに、南北の温度勾配を弱めるため、PMCの発生に負の影響を及ぼす。一方、間宮海峡ではPMC発生前の下層の風は山岳の影響を受けておらず、この領域のPMCの発生に対して地形効果は必要ないと考えられる。これらの結果は、地形強制に対するPMCの応答が地域的に多様であることを示している。

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© The Author(s) 2020. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
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