気象集誌. 第2輯
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成層圏が熱帯対流圏に与える影響
Peter HAYNES Peter HITCHCOCKMatthew HITCHMAN余田 成男Harry HENDONGeorge KILADIS小寺 邦彦Isla SIMPSON
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2021 年 99 巻 4 号 p. 803-845

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抄録

 観測的研究およびモデル実験研究は、成層圏が熱帯の対流圏に重要な影響を与えることを示唆している。力学的結合を通じて成層圏が中・高緯度の対流圏に与える影響は、過去15~20年の間に盛んに研究されて来ており、その結果、科学的理解が向上し、数値天気予報や気候予測では既にその知見が活用されている。この結合には、成層圏から対流圏への力学的影響の伝達と、対流圏の応答を高める対流圏内でのフィードバックが必要である。一方、成層圏が熱帯の対流圏に及ぼす影響についての科学的理解は、まだ十分には進んでいない。本レビューでは、1日周期から100年単位までの時間スケールで、その影響に関する観測事実とモデル化の現状を要約する。また、影響伝達と熱帯対流圏内でのフィードバックに関連しうるメカニズムの今日的な理解と、天気予報や気候予測に対して成層圏と熱帯対流圏との力学結合が果たしうる役割について議論をする。これらには、モデル検証の機会や、季節内予報および季節予報の改善の機会、成層圏オゾンの変化の影響や、採りうる気候工学的アプローチの影響などが含まれる。最後に、未解決の科学的疑問点を特定し、これらの疑問点を解決するために必要な今後の観測およびモデル実験研究を提案する。

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© The Author(s) 2021. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
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