抄録
所謂,風下波動は,静力学の式を仮定すると現われないことを示し,ここでは,静力学の式を仮定して,地表から熱的影響を受けながら気流が山を越す場合に,山の下流に局地的強風を生ずるかどうかについて,数値実験の結果を報告する。観測例として,稚内地方の春の強風をとりあげ,日本海面から冷やされた気流が利尻島を越えることによって強風がおこされることを推論し,数値実験としては,1)地表から熱的影響がなく,初期の温度分布が断熱成層をなしている場合,2)地表から夜間放射によって冷却され,初期の温度分布が断熱成層をなしている場合,3)地表から熱的影響がなく,冷気が山を越す場合について,一般流を与えて計算し,下流に強風の現われる条件を検討した。また,寒暖流による海水温の不連続,海陸の温度差,山上に残雪があり平地にない場合等のように,地表温度の不連続線によって生ずる大気の擾乱の特性を重力波の理論との関連において,物理上および計算上の問題として検討した。