気象集誌. 第2輯
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流れの速さと向きが高さと共に変るシヤー流の熱的不安定性
浅井 冨雄
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1972 年 50 巻 6 号 p. 525-532

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抄録

一般流が高さと共にその流速のみならず流れの向きも変るとき,静力学的に不安定な流体層中で発現する熱対流の性状をBoussinesq近似のもとで摂動論にもとついて調べた.一般流が変曲点のあるプロフィルをもつ場合,熱的不安定(重力不安定)の他に慣性不安定の生ずることは向きを変えない一般流の場合に得られた結果(Asai,1970b)と同じである.熱的不安定に起因する増幅率最大の卓越擾乱の構造,特に,ロール状対流の走向と一般流の関係に重点を置いて考察する.ロール状対流の軸に直角な一般流の速度成分を用いて一般流とロール状構造との関係をより一般化した.即ち,ロール状対流の卓越モードは上記一般流成分の鉛直シャーが最小になるような走向のものである.一般流の向きと鉛直シャーのそれは異なるがシャーベクトルが一定方向の場合はその簡単な一例で,卓越モードのロール軸はシャーベクトルに平行になる.流れの向きが高さと共に変らないシャー流はシャーベクトルがたまたま各高度の流れの向きと一致する特殊な例として理解される.

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© 社団法人 日本気象学会
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