気象集誌. 第2輯
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回転流体中の乱流ジェット
新野 宏
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1978 年 56 巻 6 号 p. 527-547

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抄録

回転流体中において鉛直下向きに注入された乱流ジェットの性質及びそのジェットによってひきおこされる二次流れの性質を室内実験と線形論により調べた。室内実験によって得られた主な結果をまとめると次のようになる。
1) 回転流体中においては,ジェットの先端の進む速度は静止流体中のそれに較べて小さい。
2) 回転流体中では,ジェットのもととなる流体の注入を停止したときに顕著な上昇流が生ずる。
3) ジェットによってひきおこされる二次流れはジェットの先端より十分下のレベルまでは及ばない。
ジェットによってひきおこされる二次流れの構造は,二次元の層流ジェットを仮定した線形論によって定性的に説明することが可能である。
鉛直速度の抑制は,Barcilon(1969b)及びWilkins et al.(1971a)によって考えられたように,回転している流体粒子に働く遠心力と水平方向につりあった気圧傾度力がジェットの進向方向と逆向き(上向き)の成分を持つ為におこる。この上向きの気圧傾度力の存在は1)•2)の結果をうまく説明する。3)の結果はノズル付近の収束場に伴う低圧がジェットの先端付近の発散場に伴う高圧とほとんど打消し合い,ジェットの十分下での圧力の摂動をほとんど0にしていることを示唆している。

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