気象集誌. 第2輯
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北半球8日予想における雲の影響
久保 田効
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1981 年 59 巻 6 号 p. 808-824

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抄録

北半球8日予想における雲の,放射過程を通しての影響を,実況を初期値とした4層北半球プリミティブ•モデルによる実験で追求した。モデルにおける雲として,次の三種を用いて,夏と冬の例について8日予想を行ない結果を比較した。雲がない場合(C0),4層共に100%の雲で覆われた場合(C1),各4層について予想された雲量(つまり予想された湿度の関数として与えた)を用いた場合。
C0とC1による北半球8日予想の主な差異は,夏•冬の全域平均温位の鉛直分布,冬の下層気温や500mb高度の緯度変化に現われている。
これらの差異は次の三つの雲の効果から生じたものと解釈することができる。すなわち(a)赤外放射に対する温室効果,(b)太陽放射に対するアルベド効果および(c)陸表面の顕熱•潜熱束に対する陸面効果である。温室効果は雲のない場合に比べて雲の上層を冷やし,雲の下層を温めるので対流圏を不安定化させる。アルベド効果は逆に雲の上層を温め,雲の下層の加熱を弱めるので対流圏を安定化させる。陸面効果は主として陸面による太陽放射吸収に基づくものであるから,雲によって下層大気の加熱を弱め,対流圏を安定化させる。雲のアルベド効果と陸面効果は陸上で且つ日中に限られているので,北半球8日予想の結果に与える雲の効果としては,温室効果が最も重要であることが分った。

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