気象集誌. 第2輯
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若狭湾域で観測された中規模渦状擾乱の解析的研究
浅井 冨雄三浦 勇一
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1981 年 59 巻 6 号 p. 832-843

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抄録

近年,本邦の気象レーダー観測網が整備されるとともに,本邦沿岸各地,とりわけ冬季日本海沿岸域で,しばしば中規模の渦状レーダーエコーパターンの観測が報告されるようになった。本論文では1968年2月9日早朝,福井レーダーで観測された3個の一連の渦状擾乱をとりあげ,観測データを可能な限り利用して得られた解析結果をまとめて報告する。数10kmから100kmの水平規模をもった擾乱は反時計廻りの風系をもち10-4~10-3s-1の正の渦度と~10-4s-1の水平速度収束を示す。地上付近では中心部の気圧は周辺に比して~1mb低く,低気圧を形成している。この場合初期から最盛期にかけて中心は周辺部より~1°C低い寒気で占められ,やがてその寒冷渦は暖気でおきかえられて消滅する。その寿命は数時間である。このような中規模渦状擾乱の見出された一般場は気温の水平勾配は顕著ではなく,フロントとしては検出し難いが,著しい風の低気圧性シアー,即ちシアーライン(ゾーン)の性状を示す。この種の擾乱の発生は低気圧性水平シアー帯のシアー不安定に起因するものと推測される。しかしながらそれを確認するには現在の観測資料では不十分であり,今後の追試を必要とする。

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