気象集誌. 第2輯
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Xバンド•ディジタルレーダにより得られた海洋性積雲の雨水の3次元分布
椎野 純一青柳 二郎
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1981 年 59 巻 6 号 p. 844-863

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抄録

ディジタル変換処理装置を有するXバンドRHIレーダを用いてAMTEX'75期間中,東支那海の宮古島で観測された孤立海洋性積雲の発生直後から消滅に至るまでの雨水の分布を3次元的に解析した。また鉛直シアをもつ一般風の中でのエコーの移動と最盛期初期における雨水の収支についても若干の予備的な考察を行った。エコーの主な特徴は最大レーダ反射因子42dB,最大高度4.9km,ライフタイム40分程度である。得られた主な結果は次の通りである。(1)積雲はかなり長い"揺藍期"を伴っていたが発達そのものは非常に急速で,この間のエコー頂の上昇速度は約9m/sであった。(2)最盛期の間,大きなレーダ反射因子は最大エコー頂出現数分後3~4km高度でエコー全体のほぼ中心部に現れ,雨水の局所的な蓄積領域の存在を示唆していた。(3)一般風の鉛直シアにも拘らず,最盛期初期のレーダエコーは傾きが少く,かつ鉛直方向の水平断面積の変化も小さかった。(4)初期のエコーの水平の広がりに対し,最盛期初期のそれは約4倍,また衰弱期の最大の広がりは約7.5倍であった。(5)鉛直の風向変化が顕著な一般場の中にあって,最盛期のエコーは1km程度の極めて低高度の風の,風速に対しては0.4程度の比で,また中層の風に対しては左方向に移動していた。(6)最盛期初期における雨水の収支に関する予備的な考察によると,中層では周囲との混合や鉛直移流による減少を凌駕する程に雨水の生成が起る一方,上層では中層からの移流の効果は蒸発,相対落下,及び周囲との乱流混合によって相殺され,また下層雲底付近では蒸発が顕著であった。
これまでの観測結果との比較も行った。

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