気象集誌. 第2輯
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リモートセンシングによる3.7μm窓領域における海面温度推定について
高島 勉高山 陽三
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1981 年 59 巻 6 号 p. 876-891

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抄録

赤外3.7μm窓領域(NOAA-6号衛星搭載AVHRR放射計の第3チャネル)において,海面温度と計算によって得られた衛星での輝度温度との差を中緯度帯の夏の場合について求めた。
ここで大気をplane-parallelと仮定し,そこから出てくる放射を昼および夜の場合に計算によって求めた。この波長帯では太陽光の影響が大きいので昼間はこの点を考慮した。またデータの中で雲の影響はないと仮定した。大気中では水蒸気,窒素,酸化窒素,炭酸ガス,メタン,エーロゾルによる影響を考慮した。海面は,傾きがガウス分布している素面から成立しているとし,その傾きは表面風に等方的に依存しているものとした(Coxand Munk,1955)。海面とエーロゾルの屈折率は水のそれと仮定しHale and Querry(1973)によるものを用いた。大気中の吸収物質の透過率はWeinreb and Hill(1980)による方法を用い20cm-1の幅で計算した。大気-海面系の放射伝達の計算はTakashima et al.(1977)の方法によった。
計算結果から3.7μm帯の昼間の観測によると鏡面反射方向から約15度離れた観測方向で大気の光学的厚さを求められることが判った。これは11μm帯の窓領域1チャネルでは大気の影響を直接評価できなかったが,3.7μmでは観測データより直接補正できる利点がある。事例として1979年8月2日のNOAA衛星データ(30°N,147°E)を用いて船による風のデータをもとに光学的厚さを求めたところ,船の視程観測と一致した結果を得た。またこの光学的厚さを他の観測域に適用して海面温度を求めるとSun glintの中心で1~2°K,他の領域で0.5°Kの測定精度を得た。なお,海面温度測定のより高い精度の評価には船での放射観測による表皮温度との比較が不可欠である。

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© 社団法人 日本気象学会
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