冬季成層圏循環の年々変動の解析を行なった。HoltonとTan(1980)によって示唆された赤道域と中高緯度循環の関係を念頭に置き,北極における30mbの月平均気温を26年間にわたって,赤道域50mbの準二年周期振動(QBO)の位相に対応してグループ分けした結果,以下のことがわかった。
すなわち,赤道下部成層圏(50mb)の平均帯状流が西風のとき,冬の極域の成層圏は比較的擾乱の弱い低温を示し,波数2型が出現しやすい傾向を持つ。この状況では,太陽黒点数極大の時期を除けば,真冬の強い突然昇温は起りにくい。
これに対し,赤道QBOに伴なう平均流が東風の時期には,初冬に波数1の波の発達する傾向があり,それに伴なって真冬には強い突然昇温がしばしば見られ,極域の気温は一般に高くなる。