気象集誌. 第2輯
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突然の気候変化の鍵としての海洋の湧昇
H. Flohn
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1982 年 60 巻 1 号 p. 268-273

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抄録
赤道付近および2~3の海岸に沿って, 水温躍層とともに冷水が上昇する。この論文は気候変化に重要な役割を果すこの現象について論じた。観測した事実は次の通りである。a)赤道の表面海水温と大気中のCO2やH20の量は正相関がある。b)貿易風の強さと,赤道(+沿岸)表面海水温は負の相関がある。c)貿易風の強さと両半球の中緯度(亜熱帯)高気圧との間には負の対応がある。d)赤道と極の間の対流圏の気温差と中緯度の亜熱帯高気圧とは負の相関がある。e)地球の気温変化と雪-氷-アルベドー-気温のフィードバックによってもたらされる赤道と極の間の気温差とは負の相関がある。火山爆発が盛んであった時期後の寒冷化の場合の半球規模の気候のフィードバックの機構は次のように考えられる。すなわち,連続的火山爆発後の寒冷な時代には子午線方向の気温傾度は大となり, 亜熱帯高気圧の軸は低緯度側に移り, ハードレイセルの風(貿易風)の強さは大となり, 赤道の表面海水温は低下し, 大気中のCO2とH20は減少し, さらに気候は寒冷化する。火山爆発が休止状態の温暖な時代には, 上記の傾向は逆となる。このようなフィードバックの機構は赤道や沿岸湧昇の頻度や強さを根本的に変える。しかし,海洋は閉じた系であり,また深海の入れ代りの時間スケールは500年のオーダーであるから, 上述の過程の効果は数世紀の時間に限られるであろう。
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© 社団法人 日本気象学会
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