抄録
大気境界層中に存在する反応性微量成分の平均量および変動量は化学反応の影響を受けると思われる。この論文では,これらの化学反応の影響について,航空機に搭載した応答性の高いオゾン測定器による測定結果を用いて考察した。オゾン濃度変動を乱流量の収支式を用いて検討したところ,濃度変動に化学反応が影響していると推定される測定例を見い出した。また,他の例では,境界層上部の乱流逆転層中で,オゾン濃度がその上下の層の濃度とまったく異なる特異層となっていた。この特異層についても,その生成の要因として化学反応が最も適当と思われる。化学反応についての時間スケールを100秒程度とすると,反応性の高い微量物質の接地層内での鉛直分布は,化学反応の影響を受けることが推定された。これらの化学反応性物質の研究は,境界層中での微量物質の発生源や吸収源の研究に有効であると思われる。