1982 年 60 巻 6 号 p. 1227-1237
1979年11月から1980年1月にかけて,北極圏カナダにあるイヌーヴィクにおいて,冬季の雪雲の観測を,波長8.mmの垂直レーダーを使って行なった。観測を行なったほとんどのケースで,レーダーエコー頂高度は雲頂高度とほぼ等しいか低かった。一方,雲頂高度とは無関係に,4500m以上にレーダーエコー頂高度が現われるケースもあった。レーダーエコー頂高度の気温は,-40°Cよりも常に高かった。地表近くのレーダーエコー強度は,レーダーエコー頂高度が高いほど強くなる傾向を示した。観測された典型的な雪結晶形は,交差角板,砲弾,角柱であった。これら3種類の雪結晶が,夫々,他の雪結晶形よりも「卓越する頻度」は,地表近くのレーダーエコー強度,及び,レーダーエコー頂高度によって異なっていた。この事実を,雲内の気温の鉛直プロファイルの相違を考慮して,考察を行なった。