抄録
1979年から1981年にわたり,POLEX-South (極域気水圏観測)計画の下に,東南極みずほ基地の雪面上において入射および反射太陽光の波長別観測を行った。全天日射およびアルベードの1日の,あるいは日々,季節による変化を,特に日射とアルベードとの相互作用に注目し,2つの波長域あるいは太陽天頂角,雲量等に対して整理した。
全天日射量は通常の中緯度帯の観測点での値に比べ,同じ太陽高度では極めて大きい。これは大気分子やエアロゾル,水蒸気が少いために大気の透過率が高いためであり,透過率は夏期間の月平均値で0.75から0.80であった。さらに散乱日射量も,大部分はレイリー散乱成分だが,雪面と大気層との間の多重反射により大きく,アルベード0%の所に比べ約2倍になっている。雲が全天日射を減らす度合は,やはり雪面と雲との間の多重反射のために小さい。地吹雪の全天日射に対する影響についても議論した。
雪面のアルベードは,晴天下,日射の全波長域で日平均約0.8,また可視域では0.95以上,近赤外域で約0.66である。曇天下のアルベードは,入射光の波長分布の違いのため,晴天下の値より高く,日平均でしばしば0.85を越えている。アルベードの太陽高度依存性は,雪表面の微細構造やマクロな雪面形態に依存して様々であったが,多くは太陽高度が下るとアルベードは上る傾向にあった。アルベードの測定値を,放射伝達モデルによる計算値と比較したが,平均としては良い一致が見られた。