抄録
エル•チチョン火山の大噴火(メキシコ,1982年3月,4日)後2年間,ライダーによる成層圏エアロゾルの観測を行なったところ,高度積分した後方散乱係数は,噴火後約5ケ月間大きく変動した後,1982年11月末以降減少を始めた。高度積分した後方散乱係数の1/eになる減衰特性時間は,1982年11月から1983年5月までの期間について約5.6ケ月,1983年5月以降について約12.4ケ月であった。後方散乱係数の極大高度と高度積分した後方散乱係数の重心高度は減衰初期に降下しており,粒子の重力沈降が示唆された。エアロゾル層の極大高度の時間変化は,エアロゾル層の極大高度付近の粒子の平均粒径の減少を示唆している。噴火後6ケ月から1年の期間に,エアロゾル粒子の重力沈降が,成層圏からのエアロゾル粒子の除去作用として重要な役割を果たしたのではないかと推論できる。