気象集誌. 第2輯
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筑波における冬季の大気混濁度とエーロゾルの粒径分布:エル•チチョン火山噴火の影響
浅野 正二関根 正幸小林 正治村井 潔三
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1985 年 63 巻 3 号 p. 453-463

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抄録

筑波の気象研究所において,1980年10月から1983年3月の間の3回の冬季シーズンに,直達日射の分光測定を行い,エーロゾル大気の光学的厚さの変動を観測した。('82-'83)冬季の光学的厚さは,それ以前2シーズンに比べて異常な程大きく,エル•チチョン火山噴火にともなう成層圏エーロゾルの増加によりもたらされたと考えられる。
測定された光学的厚さの波長分布から,エーロゾルの粒径分布が推算された。エル•チチョン噴火以前のシーズンの粒径分布は,bimodal分布の特徴を示し,エル•チチョン噴火後のそれは,指数則分布の特徴を呈している。また,エル•チチョン噴火に起因する('82-'83)冬季の成層圏エーロゾルの光学的性質が推定された。この時期の成層圏の太陽放射に対する平均の光学的厚さは,約0.1であり,成層圏エーロゾルの粒径分布は,ほぼ monodispersive であった。
この成層圏エーロゾルの太陽放射収支に対する効果を評価するため,簡単なモデル大気における太陽放射伝達の計算を行い,観測値と比較した。その結果,この時期のエル•チチョン噴火に起因する成層圏エーロゾルは,晴天日の地上到達全天日射量を3~4%減じ,地表一大気系のグローバルアルベードを約10%高める効果を持つことが判った。

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© 社団法人 日本気象学会
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