気象集誌. 第2輯
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63 巻, 3 号
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  • 浅田 正
    1985 年 63 巻 3 号 p. 359-376
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    中規模渦(ロスビー変形半径とベータ•スケールの中間の大きさの渦)に対する数値実験を山形-Flierl 方程式を用いて行った。実験は二種類の帯状流に対して行われた。一つは流速が直線的に変化するもの,他方はsin 型の速度分布を持つものである。直線的な速度分布の場合には中規模渦の運動や寿命を調べることが主な目的であり,sin 型の場合には実験結果と1979-81年に木星に現れた南熱帯撹乱と比較することが主な目的であった。
    直線的な速度分布の実験から次のことが分かった。
    (1)渦と帯状流が同じ渦度を持つ場合,渦は安定して存在できる。渦と帯状流の渦度が逆向きの場合,渦は大きく変形されるか消滅してしまう。(2)帯状流の速度が一様な場合,低気圧性渦は強い西向き流の中で安定であり,高気圧性渦は弱い西向き流の中で安定である。流速が非発散ロスビー波の位相速度と等しい場合は,低気圧性の渦も高気圧性の渦も安定に存在できる。(3)弱い西向き流の中では,低気圧性渦は極方向に動き,高気圧性渦は赤道方向に移動する。強い西向き流の中では,低気圧性渦は赤道方向に,高気圧性渦は極方向に移動する。(4)高気圧性渦は非発散ロスビー波より速く西向きに伝播し,低気圧性渦の多くは遅く西向きに伝播する。sin 型の速度場に対する我々の実験の中で,半径が西向き帯状流の幅とほぼ等しい低気圧渦が,この帯状流をすり抜けて極方向へ移動し,北東から南西に引き伸ばされた後消滅する場合があった。南熱帯撹乱が低気圧性の渦度を持っていたこと,極向きに発展していったこと,また実験結果と同じ方向に引き伸ばされた形状をしていたことから考えると,南熱帯撹乱はこの種の低気圧性渦であると考えられる。寿命と経後方向の移動に関しては,あまり良い一致が得られなかった。しかしより小さな低気圧性渦との衝突•合体が南熱帯撹乱の寿命を延ばしている可能性もある。
  • 住 明正
    1985 年 63 巻 3 号 p. 377-396
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    チベット高原付近の寒気の吹き出しの機構を調べるために,数値モデルの中でsimulateされている寒気の吹き出し(cold surge)を解析した。
    山の周囲の,大気の下層にtrapされるというcold surgeの基本的構造は,モデルの中で良く再現されていた。山の高さを変えながら行なった実験から,山に伴う北風の加速は,coastal Kelvin波の構造に類似していることが示された。しかしながら,単純に線形理論をあてはめると,幅も,位相速度も,実験結果の半分程度となった。このことは,線形理論の限界を示していると考えられる。
    Cold surgeを詳細に検討してみると, cold surgeは,二波あることが分った。
    最初の寒気の吹き出しは,寒冷前線の南下に伴い,山の東側に,山の側面に沿って北風が加速されているもので,運動量収支の解析から,この加速は,主として,非地衝風成分に伴うものであることが分った。しかし.このcold surgeは,山に沿って廻り,25°Nあたりのチベット高原南西部で減衰した。
    一方,2回目のcold surgeは,規模•強さも大きく主要なものと云って良い。このcold surgeは,南下するにつれ,山から離れ,20*Nを越して,更に南下した。このcold surgeに関しては,最初の段階では,第一波と同様,非地衝風成分に伴う加速が大きかったが,20°Nを越す後半の段階では,非線形項が重要な役割を果たしていることが分った。
    基本的に,cold surgeは良くモデルで表現されているものの,まだ問題がある。
    一つは,寒気が20°Nを越して南下するものの,南西にまがり,インドシナ半島に入り込むことがある。この理由は,インドシナ半島の地形の効果も詳細に取り扱っていないためと思われる。もう一つの問題は,山に沿ってのcold surgeが強すぎることである。この理由は,山のsub-grid scaleの起伏に伴う境界層の拡大という効果が上手に取り込まれていないためと考えられる。事実,この効果を入れた境界層のparameterizationをモデルに導入してみたら,予報結果は,非常に改良された。最後に,地形にtrapされたKelvin波は,大気の下層の現象のため,垂直分解能が重要であることが示された。
  • 吉崎 正憲
    1985 年 63 巻 3 号 p. 397-404
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    非弾性系における3次元運動方程式の2次精度をもつ差分形を開発した。この差分形は,3次元の運動がある場合には全エネルギーが保存し,2次元の運動の場合には全エンストロフィーも保存する。これは曲線直交座標系の運動方程式に応用できるし,デカルト座標系の可変格子にも拡張できる。
  • Becky Ross, Ernest Agee
    1985 年 63 巻 3 号 p. 405-417
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    AMTEX'75の期間中,NCARの観測機(Electra)によって収集したデータを,海面-気温差(ΔT)によって分けた次の4種類の境界層中の変動量のスペクトル特性を決定するために解析した。(a)メソスケールのセル状対流(MCC)のある強い対流(ΔT_??_5°C),(b)MCC のない強い対流(ΔT_??_5°C),(c)弱い対流(2°C_??_ΔT_??_5°C)および(d)非対流性の境界層。これら4種類のタイプについてのスペクトルの比較から MCCのある場合には他の境界層では観測されない顕著な特性が示された。MCC の有る場合の1飛行毎の比湿(q)のスペクトルには,観測された MCC のセルの大きさに対応する波長域に際立ったスペクトルピークで特徴づけられる。また,低高度におけるq-スペクトルでは高波数側までスペクトルが拡がり,かなり多くの変動エネルギーが含まれる事が示された。この研究の最も重要な発見はBenard-Rayleigh対流セルと同等のアスペクト比を持つBasic convective mode (BCM)の存在を支持する根拠が得られた事である。エネルギーが高波数側から低波数側へ輸送され,BCM から MCC モードへ組織化される過程が示唆される。
    MCC の無い強い対流境界層は MCC の発達を見掛上禁止する別のシノプテックな力が影響している。このようなケースの2例では,弱い対流と非対流の場合よりスペクトルの高波数側により多くのエネルギーが含まれるのが示された。これとは別のケースで,衛星の影像には MCC を示す雲のパターンが見られないにもかかわらず,MCCセルパターンの付近に強いMCCモードが示された。弱い対流のケースは MCC あるいはBMC モードが無いか殆んど無く,スペクトルの全領域で変動エネルギーが小さい事が示され,非対流のグループも同様に低高度でスペクトルのエネルギーは小さい事が示された。しかし高高度での2例の測定ではcold frontによる強制対流の存在を示すq-スペクトルの低波数側での際立ったピークが見られた。
  • 笹野 泰弘
    1985 年 63 巻 3 号 p. 419-435
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    大気混合層および遷移層の空間構造を,ミー散乱ライダーのスキャン測定により得たエアロゾル分布画像データをもとに調べた。混合層高度,遷移層厚さ,遷移層中に見い出されるセル構造の水平スケールとその時間変化を明らかにした。それによれば,混合層高度は13時頃に極大に達し,上昇速度は100~300m/h(8-12h)である。遷移層の厚さは朝方,増大し,以後,一定値をとる。対流セル構造のアスペクト比は早朝,2-4であるが混合層高度の増大とともに減少し,1程度の値となる。
  • 近藤 純正, 萩野谷 成徳
    1985 年 63 巻 3 号 p. 437-452
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    朝•夕の遷移時の接地層の観測を行なった。朝の接地逆転層の破壊過程には2つのタイブがあり,弱風時では,安定な接地層は地表面近くに不安定層が形成されることなく,ほぼ一様な昇温率で加熱されるのに対し,微風時には最初に地表面付近に不安定層が形成され,その後昇温過程が上層へ伝播していくことが分った。接地逆転層遷移過程において,温位の低い方向とは逆の方向に顕熱が伝わる現象,いわゆるcounter gradientheat fluxが観測された。この現象が起こる2つの機構を考えた。一つは隣接した暖•冷気塊の交換によるもの,他は安定層中への暖気塊の貫入によるものである。この機構のモデルを用いて,遷移時における接地層内の混合距離を求めた。さらにこのモデルを不安定な混合層上部のcounter gradient heat fluxが観測される層へ応用し混合距離を求めたところ,混合距離は約15~47mであり,混合距離と高度の比は0.04であるここが得られた。
    準定常時の夜間においては,摩擦温度θ*は風速と地表の冷却率に依存し,多くの場合,θ*は0.06~0.1°Cである。これは理論的にも説明された。顕熱と正味放射量の比は地表面摩擦速度に比例することも示した。
  • 浅野 正二, 関根 正幸, 小林 正治, 村井 潔三
    1985 年 63 巻 3 号 p. 453-463
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    筑波の気象研究所において,1980年10月から1983年3月の間の3回の冬季シーズンに,直達日射の分光測定を行い,エーロゾル大気の光学的厚さの変動を観測した。('82-'83)冬季の光学的厚さは,それ以前2シーズンに比べて異常な程大きく,エル•チチョン火山噴火にともなう成層圏エーロゾルの増加によりもたらされたと考えられる。
    測定された光学的厚さの波長分布から,エーロゾルの粒径分布が推算された。エル•チチョン噴火以前のシーズンの粒径分布は,bimodal分布の特徴を示し,エル•チチョン噴火後のそれは,指数則分布の特徴を呈している。また,エル•チチョン噴火に起因する('82-'83)冬季の成層圏エーロゾルの光学的性質が推定された。この時期の成層圏の太陽放射に対する平均の光学的厚さは,約0.1であり,成層圏エーロゾルの粒径分布は,ほぼ monodispersive であった。
    この成層圏エーロゾルの太陽放射収支に対する効果を評価するため,簡単なモデル大気における太陽放射伝達の計算を行い,観測値と比較した。その結果,この時期のエル•チチョン噴火に起因する成層圏エーロゾルは,晴天日の地上到達全天日射量を3~4%減じ,地表一大気系のグローバルアルベードを約10%高める効果を持つことが判った。
  • 林田 佐智子, 岩坂 泰信
    1985 年 63 巻 3 号 p. 465-473
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    エル•チチョン火山の大噴火(メキシコ,1982年3月,4日)後2年間,ライダーによる成層圏エアロゾルの観測を行なったところ,高度積分した後方散乱係数は,噴火後約5ケ月間大きく変動した後,1982年11月末以降減少を始めた。高度積分した後方散乱係数の1/eになる減衰特性時間は,1982年11月から1983年5月までの期間について約5.6ケ月,1983年5月以降について約12.4ケ月であった。後方散乱係数の極大高度と高度積分した後方散乱係数の重心高度は減衰初期に降下しており,粒子の重力沈降が示唆された。エアロゾル層の極大高度の時間変化は,エアロゾル層の極大高度付近の粒子の平均粒径の減少を示唆している。噴火後6ケ月から1年の期間に,エアロゾル粒子の重力沈降が,成層圏からのエアロゾル粒子の除去作用として重要な役割を果たしたのではないかと推論できる。
  • 小林 愛樹智
    1985 年 63 巻 3 号 p. 475-481
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    一次元数値モデルを用いてアンモニアの垂直分布を再検討した.アンモニアはエアゾル粒子への吸収とwet depositionによって効果的に大気中より除去され,また地上での濃度も低いことが屡々観測されているので,大気中での濃度は以前の研究で計算されたよりも低いことが示唆される.
  • 山中 大学, 田中 浩, 廣澤 春任, 松坂 幸彦, 山上 隆正, 西村 純
    1985 年 63 巻 3 号 p. 483-489
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
  • 林 正康, 横山 長之, 水野 建樹
    1985 年 63 巻 3 号 p. 491-495
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
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