抄録
アジア大陸から西太平洋に至る冬期アジアモンスーンにおける低気圧の発達に関し,FGGE 年についてエネルギー変換過程を調べた。数値解析は個々のStormの発生から移動を追って解析領域を動かして行なった。Stormの発達の様相を合成的に見るために,エネルギー収支は発達の各ステージ毎にわけてまとめた。また5例については個別的な解析も示してある。
運動エネルギーの生成は,その大部分(86%)が渦による局所的な傾圧性に起因するものである。これは,低気圧の発達が海洋上で起っているという事実と合致している。しかし,Storm組織内部には更に附加的なエネルギー源も存在する。Eddy Conversionの総量はStormの経路にも依存する:すなわち変換量が最大となるのは,暖い海洋上の広域にわたってStormが急速に発達する場合である。運動エネルギーの強さとバランスは,Stormの初期の段階から発達末期の閉塞段階にかけて急激に変化する。初期には運動エネルギーの生成と放出が最大であり,消散は最小である。これに対し,発達の後期には,生成と放出は減少し,消散が明瞭に増大する。後期においては,運動エネルギーが大量に系外から補給されている。