抄録
気象研究所(東京および筑波)で観測された,Sr-90, Cs-137, Pu-239,240,と Pu-238の年間降下量について報告する.これらの放射能の経年変化を説明するため,半経験的な大気輸送のボックスモデルを改善•適用した.このモデルでは北半球大気を,4つのコンパートメントにわけた.すなわち高度21km以上の上部成層圏と21km以下の下部成層圏と,下部成層圏下で圏界面近くの混合層(AME層)と対流圏である.コンパートメント間の放射能の輸送は,一次の速度で起ると仮定した.解析の結果,各コンパートメントからの放射能の半減時間を,上部から,それぞれ,0.5年,0.7年,0.3年とすると,放射能の降下量の経年変化を定量的に説明できることが判明した.また,核実験時の北半球成層圏への放射能の打上げ量も,本モデルによって,評価することができた.核実験などで,放射能物質が成層圏へ入った場合,本モデルから年間降下量が予測できるので,実用上も役に立つことがわかった.