気象集誌. 第2輯
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Nimbus-7ERBから推定される発散風循環:1982-1983ENSO現象への応用
Philip E. ArdanuyT.N. Krishnamarti
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1987 年 65 巻 3 号 p. 353-371

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抄録

ニンバス7号地球放射収支(ERB)実験による資料を用いて1982-1983年のエルニーニョ/南方振動(ENSO)に伴ない対流圏の風の場に発現した全球規模かつ準定常的な非回転流の異常を同定し,記述した。広域巾の外向長波放射(OLR)と200mb面の発散風との間の統計的対応はFGGE年について展開されている。(Krishnamurti and Low-Nam,1986)その成果に基づく回帰式をエルニーニョ期間中のOLR場に適用し,同現象に伴なう上層発散量を推定した。
熱帯においては活発な直接循環的ハドレーおよびウォーカー循環の異常が存在することが示される。インドネシア,北オーストラリア,アフリカおよび北部ブラジルの旱魑地域はENS0現象中に形成された東西循環の異常による下降流の地域にあたることが見出される。北太平洋のフィリッピン諸島からハワイにかけてと南太平洋の旱魑地域は南北ハドレー循環の異常による下降流の地域に位置する。中緯度に向けてのテレコネクションも明白に認めることができる。ニュージーランド,赤道太平洋および米国南部に上昇域,赤道の南北における亜熱帯太平洋に強制下降域を伴う波列が卓越的な特徴として明白である。
エルニーニョの最盛期においては,赤道太平洋上における主要な海面水温最大域における月平均の上昇流は1cm/sec,また200mb面での発散東西風の異常は4m/secに達する。上昇流の異常は独立に推定された全球的な雲量分布と高い程度の対応を示している。

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