気象集誌. 第2輯
Online ISSN : 2186-9057
Print ISSN : 0026-1165
ISSN-L : 0026-1165
65 巻, 3 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 矢野 順一
    1987 年 65 巻 3 号 p. 313-327
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    木星型惑星(木星•土星)の大気においては,西向きと東向きに流れが緯度とともに入れかわる帯状流のパターン,長期間にわたって安定に存在する孤立斑(孤立渦:特に,大赤斑の場合,すでに300年以上にわたって観測されている)など様々な運動が見い出される。それらの大気運動についての観測的知識は,ボイジャー探査機によって飛躍的に増大した。しかし,私たちは,木星型大気の力学について,Charney, Eady, Lorenz らが,地球大気に対して確立したのと同等な理論的理解をもつには,まだ,至っていない。2部からなる本研究では,そのための基礎となる基本的考察を行なった。
    第I部では,次の最も基本的な問題点について論じた:
    (1)運動の深さ:木星型大気は,地球大気とは異なり,明確な地表面をもたず,むしろ,分子性流体の層として内部深くまで続いている。それでは,観測されている大気運動は,地球大気のように浅い(薄い)ものか,内部深くまで及んでいるのか?
    (2)エネルギー論:木星型大気は太陽加熱と同オーダーの熱エネルギーを内部にもっている。この2つのエネルギー(太陽エネルギー•内部熱エネルギー)のどちらが主たる大気運動の起動力の役割を果たしているのか?
    これらの2点について,以下のような結論を得た:
    (1)木星型惑星の内部の順圧的流体層で可能な定常(定在)運動は,軸対称帯状流のみであることを示した。したがって,定常的(定在的)な運動であることが観測的に知られている帯状流と孤立渦の中で,帯状流は内部深くまで及んでいる可能性があるが,孤立渦は,太陽の差分加熱によって傾圧性が存在しうる大気上部に限られた運動であると結論される。
    (2)有効位置エネルギーの定式を,対流不安定を含んだ場合に拡張することによって,大気運動の主たるエネルギー源が内部熱エネルギーであることが分かった。
  • 第II部大気層の力学
    矢野 順一
    1987 年 65 巻 3 号 p. 329-340
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    第II部の目的は,スケール•アナリシスによって,木星型大気層(木星型惑星の分子性流体層の上部;流体が理想気体として扱える領域)の力学を研究するための基礎を提供することである。以下のことを示した:
    (1)木星型大気層の力学は,ほぼ地衡風バランスの下にある水平2次元的な運動で,積雲対流のような強い鉛直運動はほとんど見られない。水平運動の時間発展は,鉛直移流の項を含まない温位保存の式のみによって決定され,以前から知られていた地球流体の力学レジーム〔準地衡風(QG),惑星規模(PG),中規模(IG)〕とは異なり,渦度方程式を必要としない。特に,Williams,山形,浅田らによって期待されていた中規模(IG)スケールの力学は,成層のパラメーターが小さすぎるために,木星型大気層では実現しえないことが示される。また,この木星型大気層の力学レジーム〔熱地衡風(TG)〕では,Rossby波が存在しえないので,その存在を前提とした Rhines 効果に基づく Williamsの帯状流モデルも否定される。
    (2)木星型大気では,内部からの熱流束は,大規模スケールの水平運動にともなうゆっくりした鉛直運動によって十分にまかなうことができる。したがって,鉛直熱輸送のバランスを保つためには積雲対流の存在が不可欠である地球大気とは異なり,木星型大気の雲の大部分は,水平運動によって流されていく安定な層状の雲であると結論される。
  • 宮原 三郎
    1987 年 65 巻 3 号 p. 341-351
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    CISK に基づいた簡単な熱帯季節内振動のモデルを作り,時間積分を実行した。このモデルでは海水面温度(SST)分布に伴う対流活動度の変化を,CISK パラメータの変化としてモデルに取り入れる。インド洋から中部太平洋にかけての熱帯高 SST 域で対流活動が盛んであり,CISK に伴って大きな内部加熱が存在すると仮定した。
    この領域に発生した不安定擾乱は時間と共に成長しながら東に進む。この擾乱は,鉛直方向にはバロクリニックな構造をしており,水平面内では,Gill のパターンを持ち,Kelvin と Rossby 型の結合体を成している。この擾乱が更に東に進んで低 SST 域に入ると,CISK が弱まるため散逸するとともに分散性によって,東進する自由波を生じる。この自由波は,更に東進して高 SST 域に達し次の新たな不安定擾乱となる。
    熱帯季節内振動は,上記のような過程の繰り返しによる熱帯大気の脈動として理解され得ることが示された。
  • Philip E. Ardanuy, T.N. Krishnamarti
    1987 年 65 巻 3 号 p. 353-371
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    ニンバス7号地球放射収支(ERB)実験による資料を用いて1982-1983年のエルニーニョ/南方振動(ENSO)に伴ない対流圏の風の場に発現した全球規模かつ準定常的な非回転流の異常を同定し,記述した。広域巾の外向長波放射(OLR)と200mb面の発散風との間の統計的対応はFGGE年について展開されている。(Krishnamurti and Low-Nam,1986)その成果に基づく回帰式をエルニーニョ期間中のOLR場に適用し,同現象に伴なう上層発散量を推定した。
    熱帯においては活発な直接循環的ハドレーおよびウォーカー循環の異常が存在することが示される。インドネシア,北オーストラリア,アフリカおよび北部ブラジルの旱魑地域はENS0現象中に形成された東西循環の異常による下降流の地域にあたることが見出される。北太平洋のフィリッピン諸島からハワイにかけてと南太平洋の旱魑地域は南北ハドレー循環の異常による下降流の地域に位置する。中緯度に向けてのテレコネクションも明白に認めることができる。ニュージーランド,赤道太平洋および米国南部に上昇域,赤道の南北における亜熱帯太平洋に強制下降域を伴う波列が卓越的な特徴として明白である。
    エルニーニョの最盛期においては,赤道太平洋上における主要な海面水温最大域における月平均の上昇流は1cm/sec,また200mb面での発散東西風の異常は4m/secに達する。上昇流の異常は独立に推定された全球的な雲量分布と高い程度の対応を示している。
  • 新田 勅
    1987 年 65 巻 3 号 p. 373-390
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1978~1984年の約7年間の衛星による雲量,海面水温,高度場データを用いて,夏期,熱帯西部太平洋の対流活動の年々変動と季節内変動の実態,および北半球大気循環場に与える影響を調べた。
    西部太平洋熱帯域の海面水温が例年より1°C程度高い年の夏には,例年フィリッピン付近に位置している対流の活発域が北東方向に移動し,20°N付近の亜熱帯域に達する。これらの活発な対流群は多くの台風や熱帯低気圧で成り立っており,この時,北側の中緯度帯と,南側の赤道域では逆に雲量の減少が見られる。このような夏には,中国大陸東部から日本を横切り,北太平洋にかけての中緯度帯で,垂直に立った構造を持った高気圧偏差が卓越する。
    5日平均雲量の解析から,この領域の対流活動の変動には,大きな季節内変動成分があることがわかった。対流の季節内変動は,高水温の夏に,15°N~20°Nのフィリッピン海でより活発化し,その結果,夏中を通して見ても,高水温の年の方が低水温の年に比べて大きな雲量が現われる。
    5日平均の雲量と500mb高度との相関計算から,フィリッピン付近の熱源域から北米に連なる波列が存在することが明らかになった。日々の高度データの解析から,,これらの波列は,フィリッピン海で対流活動が活発化する時に発生し,振幅の増大が,西太平洋から北米西岸にかけて,約5日間で伝わっていることがわかった。
    以上のことから,季節内変動に伴う対流活動の強まりによって,大気中にロスビー波が励起されており,高水温年の夏には,これらのロスビー波の励起が頻繁に起きる結果,東アジアから北西太平洋にかけての中緯度で,高気圧が強まるものと考えられる。
  • Yi-Leng Chen
    1987 年 65 巻 3 号 p. 391-400
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    GATE の Phase III 期間中の六つのクラウド•クラスターについて Frank (1978)による分類に基づくライフ•サイクルの合成結果は,積雲による加熱と乾燥化が1サイクルの間に大きく変化することを示す。積雲による加熱(Q1-QR)および乾燥化(Q2)は下部対流圏において始まる。クラウド•クラスターが成熟するにつれ上部対流圏の加熱は増大し,一方600mb 面以下では乾燥化と積雲による加熱の減少がみられる。上層の積雲加熱の最大は上層雲量の最大時にみられ,Q2の値の最大レーダ•エコー強度の最大時にみられる。湿潤静力学エネルギー(Q1-Q2-QR)の下部対流圏における減少は積雲系の成長期に始まる。一方上層においては背の高い積雲が支配的となるより後の段階で,鉛直方向の渦輸送による加熱が重要な要素となる。
  • Tsing-Chang Chen, Ming-Cheng Yen, Durga P. Nune
    1987 年 65 巻 3 号 p. 401-421
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    中間スケール(東西波数4~6)の波動-特に波数5の波-が存在することが,南半球夏期の大循環の大きな特徴である。ヨロッパ中期予報センター作成によるFGGE III-bデータを用いて,南半球大循環に果すこの波の役割について,3つの観点-波による輸送,エネルギーの変動,下流域での発達-から調べた。
    中間スケール波動は,南半球の夏期循環場において,波動じょう乱による熱と運動量の全輸送量のうち,約半分をまかなっている。太平洋域の低気圧経路での上層と下層における熱輸送の違いから,海面水温が中間スケール波動の発達に影響を与えているものと思われる。また,この波による運動量輸送がジェット流を維持している。エネルギー解析から,波動じょう乱のエネルギー変動の大部分は,中間スケール波動によっており,南半球夏期循環の振動現象には,この中間スケール波動が重要な役割を果しているものと思われる。1978-79の夏,中間スケール波動の下流域での発達が何例か認められた。この発達は,傾圧過程でおきており,また,衰弱段階では,順圧過程で維持されていることがわかった。
  • 時岡 達志, 谷貝 勇
    1987 年 65 巻 3 号 p. 423-438
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    全球大気大循環モデルによる1月の再現実験の結果を解析して大気潮汐を調べた。モデルの対流圏では亜熟帯域の大気境界層(PBL)と熱帯域の対流圏中層に1日周期および半日周期の強い熱的強制力がある。Forbes(1982a,b)と比較すると,対流圏の下層においてモデルは両方のモードでより大きな値になっている。成層圏における1日周期と半日周期の熱的強制力はForbes(1982a,b)とほぼ良い対応をしている。
    モデルは太陽と同期する起潮力以外のモード,(f=-1,m=5),(f=1,m=3),(f=-1,m=9),(f=1,m=1),....を作っている。ここでfは振動数(day-1),そしてmは東西方向の波数を表わす。このような非同期モード*の起潮力は熱帯におけるPBLと対流圏の中層で大きな値を持っており,低緯度の陸上で日中に受ける大きな加熱が本質的な役割を果している。
  • 猪川 元興
    1987 年 65 巻 3 号 p. 439-453
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    巽の狭領域スペクトル法(1985)では,修正フーリェ基底関数が変換法と共に用いられており,付加された基底関数のスペクトル展開係数は,所与のものである。
    本論文では,付加された基底関数のスペクトル展開係数をあらかじめ与えるのではなく予報する,別の狭領域スペクトル法が,ガラーキン法に基づき定式化される。この方法が巽の狭領域スペクトル法と比較され,巽の狭領域スペクトル法の有利な点が,議論される。
    また,修正フーリェ基底関数を変換法と共に用いると,相互作用係数にエラーが生じ,エネルギー保存則が成立しない事が示される。
    高階微分に見られるギッブスの現象や境界緩衝項の効果の具体例も示される。
  • 石島 英, Mariano Estoque
    1987 年 65 巻 3 号 p. 455-467
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    台湾の北部と南部を横断する各2組の台風について,地形による台風域内の地上気象要素分布の変形の事例解析を行った。地上気圧,気温,比湿について,それぞれの5年間平均した月平均値からの偏差を用いて,地形効果を調べた。
    主な結果は次のとおりである。
    (1)中央山脈の風下に気圧の谷,風上に峰が形成され,その上昇•下降は山脈を横切る風が強いほど大きい。
    (2)一般に中央山脈の風上側に強い降雨があり,風下で暖かく乾燥するフェーンが観測される。フェーンの強さは山脈を横切る風の強さおよび降雨と深く関係している。
    (3)二次的渦の形成が起こる場合があり,規模の小さい北部を横切る台風では中央山脈の西側と,島の南端に現れる。南部を横切る大きな台風では,中央山脈の軸と大きな角度をもって島の北東部に気流が吹く時,島を横切る前に山脈の南西部に二次的渦が形成される。
  • 井上 豊志郎
    1987 年 65 巻 3 号 p. 469-481
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    極軌道衛星 NOAA一7に搭載されている AVHRR の11μm と12μm のデータを用いて対流性降雨域推定の可能性を調査した。分割窓領域2チャンネルデータから,積乱雲, および,降水領域推定で問題点であった降水を伴わない絹雲系の雲と下層の積雲を客観的に判別した。この研究では,700mb より高い雲頂を持つ積雲および積乱雲を衛星による降雨域と定義し,対応するレーダーの降雨域との比較を8例行なった。調査は, ディジタルレーダーの観測範囲と,対流雲の発生しやすい大気状態を考慮して,北緯33°-39°, 東経135°-141°の領域について,1984年の夏期に行なった。
    本手法は,従来の-20°Cを降水雲の閾値とする赤外1チャンネル法に比し,表現率で12%, 空振り率で13%良好な結果を示した。空振り率では,ほぼどの場合でも良好な結果を示した。本手法の従来の赤外法に対する空振り率の改善は,他の著者により報告されている可視•赤外2チャンネル法が従来の赤外法に対して示す改善と同程度であった。 本手法が赤外法に比して特に良好な結果を示すのは,単層の絹雲系の雲,あるいは下層の降水雲が調査域を広く覆っている場合であった。
  • 和田 誠
    1987 年 65 巻 3 号 p. 483-495
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    昭和基地の1979年の高層及び地上データまた内陸みずほ基地の地上観測データを解析し,高気圧下に於ける雲の形成機構について考察した。昭和基地では12月を除いて高気圧下においても,雲量10の時が30%以上あった。みずほ基地でも,月による変動があるが雲量10の日数はかなり高かった。更に高気圧下においても降雪が観測されたこともあった。これらの回数は夏期より冬期に多かつた。高気圧下においては,しばしば安定層や逆転層が見られ,それらは,800mb付近と雪面(地表面)近くに多く見られた。雲の形成,発達はこれらの安定層と関係していることが多い。解析から示唆されたおもな雲の形成機構は,安定層の下の弱い対流活動,湿った空気と冷たい空気の混合,そして雪面での放射冷却に起因する機構であり,発達機構のひとつは雲頂での放射冷却に起因する機構であった。
  • 新田 勅, 元木 敏博
    1987 年 65 巻 3 号 p. 497-506
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    この短報では,1986年11月,西部太平洋赤道域でおきた対流活動の急激な発達と,強い下層西風の出現に関する解析結果を報告する。これらの活発な対流群と下層の西風は,その後東進し,日付変更線東に達し,1986-87年エルニーニョの発達につながった。
  • 武田 喬男, 岩崎 博之
    1987 年 65 巻 3 号 p. 507-513
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
  • 岡田 菊夫, 小林 愛樹智, 岩坂 泰信, 成瀬 弘, 田中 豊顕, 根本 修
    1987 年 65 巻 3 号 p. 515-521
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    Measurements of aerosol particles and light scattering coefficient were carried out at Nagoya in Japan during the Asian dust-storm events in April in 1979 and 1980. Asian dust-storm particles collected with an impactor were examined through a transmission electron microscope and most of them were found to be mainly composed of water-insoluble material showing irregular shape on the collecting surface. The mean ratio of maximum length to width is 1.4 for these particles. It is also found that most of these particles were surrounded by water-soluble material.
feedback
Top