気象集誌. 第2輯
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海陸風循環の線形論
新野 宏
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1987 年 65 巻 6 号 p. 901-921

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抄録
海陸風循環の性質を線形論で調べた。静水圧近似のもとでは,コリオリカがなければ,海陸風循環の線形論は相似解を持つ。相似解に現れる各変数のスケーリングから,海陸風の水平•鉛直スケールはそれぞれNκ1/2ω*-3/21/2ω*-1/2で,水平•鉛直速度のスケールgαT/N,gαΔTω*/N2で,圧力のスケールはgαΔTκ1/2ω*-1/2で与えられることがわかった。ここで,ω*とΔTは地表面で与え温度の周期的時間変化の振動数と振幅,Nは基本場の浮力振動数,κは渦温度伝導率, gは重力加速度,αは体膨張率である。渦プラソトル数は1を仮定した。
海岸線の近くの非常に小さな領域では静水圧近似が成り立たないため,相似解も成り立たなくなる。この非静水圧領域の水平•鉛直スケールは共に(κ/N)1/2のオーダーであり,そこでは鉛直速度が水平速度と同じオーダーになる。しかし,この領域の外側では相似解は至るところで有効である。
コリオリカが存在するとき,非静水圧領域の外側の解は無次元コリオリ係数f=f**のみに依存する。海陸風循環の水平スケールλ*を,海風の無次元流速が0.03に減少する海岸線からの距離で定義すると,λ*=Nκ1/2ω*-3/2•F(f)で与えられる。ここでF(f)はfの普遍関数である。Fはf<1すなわち緯度が30度以下のときにはほぼ一定(~2.1)にとどまるが,f>になるとfと共に急激に減少し,南極•北極にあたるf=2に対しては0.9となる。
渦プラントル数及び非線形過程の流れに及ぼす効果についても議論する。
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© 社団法人 日本気象学会
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