気象集誌. 第2輯
Online ISSN : 2186-9057
Print ISSN : 0026-1165
ISSN-L : 0026-1165
降雪時の地表付近の大気電位傾度と降水電荷の鉛直構造
遊馬 芳雄菊地 勝弘谷口 恭藤井 智史
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 66 巻 3 号 p. 473-488

詳細
抄録

降雪時の下層大気での大気電位傾度と降水電荷の鉛直構造を調べるために,係留索上に数点の観測点をつけた係留気球観測を行った。また,地上と高さ22mのビルの屋上で同時に観測したデータの解析も行った。得られた主な結果は次のようなものである。
(i)電位傾度と降水電荷の間に存在する鏡像関係は地上付近では常に観測されるが,100m,200m上空では必ずしも観測されない。
(ii)降雪粒子の電荷は上空で小さく,地表で大きい。このことは,降雪粒子が地表付近で急速に帯電していることを示している。
(iii)雲底の高さが低くて,係留気球の最も高い観測点が雲内あるいは雲底近くにある時,最も高い観測点では,降雪粒子の帯電は弱く,また正に帯電していた。そして,電位傾度の符号との間には直接相関関係がなかった。一方,地上付近では,降雪粒子は負に帯電していて,電位傾度は正の値であった。したがって,降雪粒子は落ド中に負の電荷を得,鏡像関係が地表付近で成立している様子が観測された。
(iv)地上での電位傾度はコロナ放電によって放出されたイオンによって影響を受けていることが観測された。
(v)雲底下でもっとも有力な帯電メカニズムはWilsonの選択的イオン捕捉説と考えられる。大気電気要素の振舞いは,遊馬•菊地(1987)によって報告された数値実験とよい一致がみられた。

著者関連情報
© 社団法人 日本気象学会
前の記事 次の記事
feedback
Top