気象集誌. 第2輯
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超雲団、西風バースト、30-60日振動そしてENSOの力学:ある統一した視点
K.-M. LauPeng LiC.H. Sui中澤 哲夫
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1989 年 67 巻 2 号 p. 205-219

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抄録

本論文では、西太平洋における超雲団(SCC)、西風バーストそして30-60日振動と関連した風と対流の観測された変動の機構を解明するための初歩的な数値実験の結果が示される。Lau and Peng (1987)のモデルを用いると、30-60日振動と関連した東進する降水パターンの生成が SCC として認められる。その発達期において SCC は SCC とは逆に西進する対流クラスターを伴っている。私たちの結果は、これらの西進するクラウドクラスターは、大規模場の流れと加熱の相互調節によって、30-60日じょう乱の発達期にできるロスビー波と関連していることを示唆している。もし下面境界からの強制が東西一様で、他の外力もないならば、 SCC は、赤道東西面で惑星規模の東西循環セルを伴った、組織化された東進する降水パターンに次第に落ち着く。熱帯大気での季節内変動は複合スケールの過程であることがわかった。3つの基本的な空間スケールが認められる。すなわち、クラウドクラスターと関連した総観規模運動のサイズ(波数1と2)。最初のスケールは西風バースト、対低気圧の生成、そして数日のオーダーを持つ高周波変動と関連している。2番目、3番目のスケールは、30-60日振動のゆっくりした東進と関連している。
SCC と西風バーストとの関係を、海面水温が東西で変化している下でのモデル SCC の空間•時間変動を詳細に調べることによって研究した。海面からの加熱と同様に対流圏下部での wave-CISK 加熱が、実際の大気で観測される強い非対称性を持った下層の西風バーストを形成する上で重要であることがわかった。低周波振動の統一的理論の発展から見た本結果の示唆する点についても議論される。

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