気象集誌. 第2輯
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1986年6月1日~20日に観測されたスーパークラスターの構造と偏東風波動との関係
高薮 縁村上 勝人
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1991 年 69 巻 1 号 p. 105-125

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抄録

1986年6月1日~20日に熱帯西太平洋上を東進したスーパークラスターに伴う構造とそれを構成する西進構造との特徴を解析した。用いたデータは、GMS赤外ヒストグラムデータ及び気象庁全球客観解析データである。この期間、約3000kmの東西幅を持った4個のスーパークラスターが次々と東進するのが観測された。
主な結果は次の通りである。(1)1986年6月1日~20日に観測されたスーパークラスターの階層構造は、ケルビン波的構造を持った赤道上の東進モード赤道から数度離れた緯度を西進する偏東風波動とから構成されていた。(2)赤道上の東進モードは北緯10度~南緯10度において特に東西風成分に顕著な振幅を持っていた。コンポジット構造に見られる風と高度場との関係はケルビン波的構造を示しているが、東進速度は10度~12度/日であった。鉛直構造からは対流圏上部からの下向きエネルギーフラックスが示された。
積雲対流の効果による有効位置エネルギーから東進モードの運動エネルギーへの変換は小さく、一方、対流圏上層における南半球からのエネルギー入力が示唆された。(3)西進する雲クラスターに伴う西進モードの構造は、従来観測されている偏東風波動の構造に対応していた。また、この偏東風波動の振幅は、東進モードとの位置関係によって変調を受けていた。東進モードの下層収束の西方では積雲対流活動がより活発で有効位置エネルギーから偏東風波動の運動エネルギーへの変換が大きく、上層の擾乱の振幅が特に励起されていた。下層擾乱の振幅に対しては東振モードの影響は比較的小さかった。

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