気象集誌. 第2輯
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サヘルの降水量アノマリーに関連した地上循環場の特徴と長期トレンド
Stefan HastenrathKlaus WolterKlaus Wolter
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1992 年 70 巻 6 号 p. 1045-1056

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抄録

1948-1983年における船舶による海上気象観測と西アフリカの地上気象データを用いて、クラスター分析、相関解析及びトレンドの解析を通した熱帯大気循環パターンの変動を、サハラ砂漠南縁地帯の干ばつ傾向の持続と関連して調べた。
サヘルにおける雨期の小雨は、北大西洋亜熱帯高気圧の赤道側への張り出し、北東貿易風の強化と南からのcross-equatorial flowの弱まり、熱帯北大西洋のSST負アノマリー、インド洋の SST正アノマリー、の各パターンの出現で特徴づけられる。サヘルの降水量変動とこれらのパターンの関係は、長期的なトレンドでみても、トレンドを除いた年々の変動でみても認められる。
大西洋域の循環場のトレンドとして、熱帯北大西洋での気圧上昇が認められる。それに対応して、赤道低気圧の南偏、南北大西洋の貿易風の強化と赤道付近での雲量の増加、熱帯北大西洋と中央アメリカ周辺の海洋での雲量の増加、及び熱帯北西大西洋域でのSST下降(南大西洋ではSST上昇)がみられた。
西アフリカの陸上でも、海岸付近の気温や気圧は隣接する海域と同様な傾向が認められた。サハラ砂漠南縁地帯の内陸域では、温暖化傾向が卓越するが、それは恐らく、海からのモンスーンに伴う冷涼な空気の侵入の弱まり、及び降水量やそこでの蒸発量の減少の結果として考えられよう。中央サハラ砂漠南縁地帯での内陸の気圧下降のトレンドは、気温上昇に伴う静力学的関係を反映しているかも知れない。

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