気象集誌. 第2輯
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鉛直シアーを持った基本流における、熱帯加熱によって励起される外部モードとその伝播
加藤 輝之松田 佳久
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1992 年 70 巻 6 号 p. 1057-1070

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抄録

定常の熱帯加熱によって直接的に作られる内部モード(傾圧モード)の運動による外部モード(順圧モード)の生成を二層全球モデルを用いて研究した。方程式系は鉛直シアーを持った剛体回転している平均東西流を基本場として線型化した。先ず第一に、外部モードの内部モードとの結合を許す基本場の東西流の鉛直シアーの効果を詳しく調べた。第一近似として、内部加熱によって作られる内部モードの運動が、外部モードの運動とは独立に決定され得るということを仮定した。そして、そのようにして決定された内部モードと基本流の鉛直シアーから、外部モードの運動が決定される。この近似を使うと、内部及び外部モードを支配する方程式系を等価深さの異なった値を持つ、二つの浅水方程式系に帰着することが出来る。
得られた計算結果では、このようにして励起された外部モードの運動は内部モードのそれよりは、熱帯においては小さいが、中高緯度においては大きくなっている。局所的な加熱領域から北東及び南東方向に発する外部モードのロスビー波の波列が形成された。こられの波列は発している領域の対蹠点まで広がっている。内部モードと基本流の鉛直シアーの結合から、外部モードを励起する7つの項が現れるが、そのそれぞれの効果を調べた。その結果、鉛直シアーを持った基本流による内部モードの渦の東西移流を表現する項が、最も重要であることが判った。この強制項に関する考察と数値計算の結果の検討によって、局所加熱領域における外部モードの運動の渦度の符号を詳しく議論した。
さらに、内部モードの運動から外部モードの運動を励起することが出来る、鉛直方向に大きさが異なるダンピングとエクマンパンピングの効果についても調べた。これらの効果によっても、外部モードの波列は形成された。加熱領域における外部モードの運動の渦度の符号を議論した。

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