気象集誌. 第2輯
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FGGE期間におけるアマゾン川の流域水収支
松山 洋
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1992 年 70 巻 6 号 p. 1071-1084

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抄録

FGGE期間(1978年12月一1979年11月)におけるアマゾン川の流域水収支の季節変化について客観解析データ、降水量データ、河川流量データを用いて解析した。これらのデータを大気の水収支式と流域水収支式に代入することによって流域蒸発散量と相対的な流域貯留量を算定し、水収支各項の関係について検討した。
ヨーロッパ中期天気予報センターで解析されたFGGE"main"III-bデータより算定される年水蒸気収束量は河川流量データから得られる年流出高よりも小さくなるが、これは熱帯の風の収束•発散が弱めになるような4次元同化方法を用いてこの客観解析データが作成されているためであると考えられる。そこで年流出高と一致するように年水蒸気収束量を1.37倍して補正を施すと、降水量と水蒸気収束量の季節変化のパターンはよく合い、大気の水収支式から得られる蒸発散量は1年間ほぼ一定の値をとることがわかった。これに対して流域貯留量は1年間で大きく季節変化することから、アマゾン川流域全体としては蒸発散量は乾季にも流域貯留量の季節変化の影響を受けないと言うことができる。また乾季の蒸発散比(蒸発散量/降水量)は雨季よりも大きくなり、蒸発散がアマゾン川の流域水循環に果たす役割は、雨季よりも乾季に相対的に重要になることも明らかになった。

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