気象集誌. 第2輯
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1900年以降の日本での不連続的気候変化
米谷 恒春
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1992 年 70 巻 6 号 p. 1125-1135

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抄録

仮説検定の方法(ラページ検定)により、1900年以降における日本での降水量が地域ごとに突然変化したことが既に示された。そこで、気温および海面気圧の変化を同じ方法により調べた。
結果は、気温および海面気圧も不連続的に変化したことを示した。また、気温の変化は観測方法の変化、測器の変更、及び他の要因の変化による見かけ上のものでないことも示された。
既になされた降水量変化の研究を参照した上で、1900年以降の日本での気候変化は次のようにまとめることができる。(1)不連続的変化が卓越しており、トレンドは有為な変化を生じていない。(2)1914年と1949年に、季節の平均気温が最大で1°Cを越える非常に顕著な気温の急上昇が生じ、これに続く季節で降水量が増加した。(3)季節の気温は1957年と1967年にも変化したが、この最近の変化は、突然に生じたが、気温の急上昇でも急下降でもない。8-10月の平均気温は1957年から年々変動が大きくなり、4-7月の平均気温は1967年から年々変動が小さくなった。(4)気温の下降トレンドが認められたが、ラページ検定で検出できるほど明瞭な変化を生じてはいなかった。(5)海面気圧は3回変化した。海面気圧のデータの質について問題があるが、1924年に気圧が変化しており、1924年に年降水量が減少したことは興味ある点である。
不連続的変化は、気候システムがカオス的な自動的力学系である、という考えを支持する。地域的な不連続的変化の機構及び非常に顕著な気温の急上昇と温室効果ガスの増加との関係については今後、研究されるべき課題である。

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