気象集誌. 第2輯
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熱帯太平洋・インド洋における降水量の十年スケール変動
新田 勍可知 美佐子
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1994 年 72 巻 6 号 p. 823-831

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抄録
地上及び衛星データを用いて、熱帯太平洋・インド洋における降水量の十年スケールの変動の振舞いと海面水温変動との関係を調べた。熱帯中・東部太平洋では1970年代から1980年代にかけて海面水温の上昇に伴って、降水量が増加していることが明らかになった。一方、熱帯西部太平洋では逆にこの期間降水量は減少しているが、これは中・東部太平洋の対流活動の活発化によるものと考えられる。南インド洋では1970年代以降海面水温の上昇に対応して降水量も増加傾向にある。しかし、1970年以前は、海面水温は上昇しているのに対して降水量はほとんど変化していない。静止気象衛星「ひまわり」の赤外放射から得られた上層雲量データを用いて、熱帯西部太平洋の対流活動の最近の変化傾向を調べた。最近16年間の長期トレンドでは、ほとんどの熱帯西部太平洋域で対流活動が不活発化の傾向にあるが、日付変更線付近の赤道中部太平洋では逆に活発化の傾向にある。これらの結果は、最近エルニーニョ的な状態が長期的に強まっていることを示しており、1970年代から1980年代にかけての熱帯太平洋の大気-海洋変動に関するこれまでの研究結果と良く対応している。以上の結果は、最近の北太平洋の大きな大気循環の変動は、熱帯域の海面水温の上昇に呼応して対流活動が活発化したことによるという、新田・山田(1989)のシナリオを支持するものである。
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© 社団法人 日本気象学会
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