気象集誌. 第2輯
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西部熱帯太平洋における降水現象の時空間変動と大規模場との関連
牛山 朋来佐藤 晋介竹内 謙介
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1995 年 73 巻 2B 号 p. 379-392

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抄録
TOGA-COARE IOP (Tropical Ocean and Global Atmosphere-Coupled Ocean Atmosphere Reserch Experiment Intensive Observation Phase)に観測されたデータを用いて、メソスケール降水現象と大規模場との関係について調べた。用いたデータは、パプアニューギニアマヌス島(2S,147E)で約2ヵ月間連続観測されたx-bandレーダーデータ、オメガゾンデデータ、およびGANAL(気象庁客観解析データ)である。レーダー観測データは、対流活動度の指標として用い、理解の簡便のため降水強度に変換した。そして、島の影響を評価するため陸上域と海上域に分けた。また、対流の強度を評価するため鉛直方向にも3つの層に分けた。これらのそれぞれの区域について降水強度を平均して時系列データを作成し、解析に用いた。
降水強度の日変化を調べた結果、陸上域では日中にピークを持つ強い日変化に支配されていた。これに対して海上域では、スペクトルには1日周期のピークが現れていたが、陸上域に比べ日変化はかなり弱かった。また、海上域では、1.5-2日、3-5日の周期のピークが陸上域に比べ強かった。
この海域の降水強度と大規模場との関係について調べるため、ラグ相関解析及びクロススペクトル解析を行った。CAPEと降水強度とのラグ相関から、CAPEは降水現象の2日前から上昇し、降水現象の直後に減少していた。また、東西風速または水蒸気混合比と降水強度とのラグ相関が、約40日周期で東方伝播しているのが見られた。これは、Madden-Julian oscillation(季節内変動)に該当すると考えられる。位相の関係は、東西風の風向が東から西に変わるときに降水現象が発生し、また降水現象の後、500hPaの高度で、混合比が上昇した。この混合比の上昇は、オメガゾンデによるデータにも見られた。
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© 社団法人 日本気象学会
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