抄録
降雨のレーダ・データを定量的に解析する上で雨滴の粒径分布が得られると有効である。そのためTOGA/COAREプロジェクトで実施された2台のドップラーレーダによるデュアル観測においても、このために特別に開発された雨滴の粒径分布の測定装置がパプア・ニューギニャのマヌス島で使用された。本装置は1つの光源と2台のビデオ・カメラの光学系から成っており、その間を、上部のスリットを通って落下する雨滴のイメージを擦りガラスで一様にした面光源を背景とする影の像として捉え、それをデジタル処理するものである。2台のカメラは異なるシャッター速度に固定され、一方は雨滴の粒径を他方は落下速度を同じ雨滴について同時に計測する。この場合、落下速度は粒径の検定のために間欠的に参照されるので、小さい雨滴に関しても信頼度が高いのが、特徴である。
ここでは、得られた結果から2つの典型例として、ガンマー関数型分布と2山型分布のものを挙げ、これらが弱い対流と強い対流の雲からの降雨にそれぞれ対応していること示した。2山型の事例は得られたレーダの解析図と比較して議論され、熱帯特有の「暖かい雨」の形成機構として考えられる併合成長の証拠として、また雨滴の蒸発過程の可能性等が考察された。