気象集誌. 第2輯
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GSWPデータを用いた土壌水分量に対するGCMの感度の評価
Paul A. Dirmeyer
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1999 年 77 巻 1B 号 p. 367-385

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抄録

GSWPの一環として、1987~1988年における高分解能の新しい全球土壌水分量データを作成した。1°×1°の土壌水分量データの2年間の全球気候値を得るために、観測値と4DDAによる気象データを与えてSSiBをオフラインで積分した。このGSWPデータはこれまでに利用可能なデータセットよりも高品質であると考えられる。また、このGSWPデータが気候の再現実験に与えるインパクトについて、陸面過程にSSiBを組み込んだCOLAのGCMを用いて調べた。
陸面-大気結合モデルを用いたこの予察的な感度実験で調べたい、本質的な問題が2つある。1つめは、「より現実的だと考えられるGSWPデータを取り入れることによって、夏季の気候の再現性と予測可能性が劇的に向上したか?」ということである。ここでは、夏季(6~8月)の気候の再現実験を行なう際に、1987-1988年のGSWPデータを境界条件とした場合の結果を、通常の陸面-大気結合モデルの実験結果と比較した。後者では、土壌水分量データを現業の解析値を用いて初期化し、陸面-大気結合系の中で何の拘束条件もなく積分した。どちらの実験でも、同一の海面水温の観測値を与えた。GSWPの土壌水分量データは陸面-大気結合モデルの気候値とは大きく異なり、前者を境界条件とした実験では、モンスーン地域と夏半球の中緯度における降水量の偏差パターンがよく再現されるという結果が得られた。しかしながら、陸面-大気結合モデルでは系統誤差がほとんど改善されていない。すなわち、前述した降水量の偏差パターンの再現性がよくなったのは、異なる土壌水分量から得られた地表面フラックスが原因であると言える。
2つめは、「土壌水分量の年々変動は、再現された気候の年々変動に寄与しているか?」ということである。そこで1988(1987)年のGSWPの土壌水分量データを陸面-大気結合モデルの1987(1988)年の境界条件とした場合と、その逆の場合の2通りについて数値実験を行なった。前者では降水量の偏差パターンの再現性が明らかに悪くなっており、これは、土壌水分量の年々変動が気候にとって重要であることを示している。しかしながら、海面水温による降水量の違いの方が、土壌水分量に基づく変動よりも、一般的には卓越している。

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