気象集誌. 第2輯
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北アメリカ大陸とユーラシア大陸における降水量変動と関連する極運動の10年変動
岩淵 哲也内藤 勲夫
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1999 年 77 巻 6 号 p. 1185-1197

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抄録

5日サンプリングで得られるIPMS(International Polar Motion Service)とSPACE94を結合した1962-1995年の極運動データに見られる10年変動に対して、極運動の陸水変動による励起が議論された。議論は、降水により供給される陸水貯留量の指数関数的減衰を仮定したモデルを、NOAA(National Oceanic and Atmospheric Administration)の5°×5°分解能の月降水量偏差データに適用し、観測および計算に基づく極運動の差の二乗が最小となるときの降水により供給される陸水貯留量のグローバルな減衰パラメータτdを決定することによりなされた。計算に基づく極運動の振幅は、τdが3.7ヶ月のとき、極運動の10年変動の振幅を約36%を説明可能であった。このとき、計算に基づく極運動の位相は、観測に基づくそれより1年先行するものの、両者の変動は類似した振る舞いを示した。この位相差を考慮しなければ、τdが5.1ヶ月のとき、極運動の10年変動の振幅の約52%が説明可能となる。この減衰時間は、降水により供給される陸水貯留量のグローバルな減衰時間を示唆する。北アメリカ大陸とユーラシア大陸西部の間には、極運動の10年変動を効率的に励起させる降水量のシーソーのような変動も確認された。これらの事実に基づき、極運動の立場から、北大西洋を作用点にもつ水循環の10年変動に関するフィードバックシステムの概念モデルが提案される。このモデルは、北大西洋振動と関係する大気変動、北大西洋における東西のシーソーのような海面変動、そして北米大陸とユーラシア大陸の降水量変動からなる。

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