気象集誌. 第2輯
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夏の関東平野における積雲対流の日々変化
佐藤 尚毅高橋 正明
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1999 年 77 巻 6 号 p. 1199-1220

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抄録

関東平野では、夏の晴れた日の午後に積雲対流が生じる。雲量データを調べることによって、ある日の午後の雲量と次の日の午後の雲量は独立ではないことが分かった。雲量が少なかった日の次の日には、雲量が多くなりやすく、雲量が多かった日の次の日には、雲量が少なくなりやすいのである。したがって、関東平野が亜熱帯高気圧に覆われていて、天候が安定している場合には、「晴れた日の次の日は晴れにくい」と言えよう。
この日々変化は、2次元の数値実験によって再現された。海陸風に対応した1日周期の境界条件を与えたにもかかわらず、積雲対流の強い日と弱い日が準周期的に現れた。数値実験の結果を調べることによって、この日々変化は、下層での温位や水蒸気混合比の鉛直分布の違いによって生じていることが分かった。積雲対流の日々変化には、より積雲対流に適した条件を与えると、より強い対流が生じ、その結果、次の日には積雲対流が生じにくい条件になってしまうという、「過剰調節」の効果が本質的に重要である。
さらに、これらの鉛直分布の違いを高層気象観測データと比較して、数値実験の結果を確かめた。温位の鉛直分布の違いは統計的には十分に有意とは言えないが、これらの鉛直分布の違いは、高層気象観測データに見られる違いと定性的に一致した。

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© 社団法人 日本気象学会
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