気象集誌. 第2輯
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気象研究所大気海洋結合モデルでのENSO-モンスーン関係
鬼頭 昭雄行本 誠史野田 彰
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1999 年 77 巻 6 号 p. 1221-1245

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抄録

気象研究所大気海洋結合モデルでシミュレートした夏季アジアモンスーンの気候値とその年々変動のENSOとの関係について、観測値及び大気大循環モデル結果と比較して調べた。結合モデルで得られた海面水温は観測と異なるものの、両モデルのモンスーン循環は互いに似ている。下層風系や対流活動の季節変化で定義したモンスーン域の拡がりは観測とおおむね合っているが、モデルは西部太平洋での夏季の風系に欠点がある。
結合モデルは、観測されるENSOに関連する熱帯循環系の年々変動をよく再現しているが、モデルのエルニーニョが西偏していることによる違いが見られる。大気大循環モデルは境界条件として与えた海面水温に応答しており、太平洋では観測と合うが、インド洋では観測と異なる。結合モデルでは大気と海洋の双方向の相互作用が表現できるが、大気モデルでは与えた海面水温に応答するだけであることが違いをもたらしている。
結合モデルの結果によると、モデルのエルニーニョ時にインド夏季モンスーンが弱く、ラニーニャ時にモンスーンが強い傾向が見られ、観測と矛盾しない結果が得られた。強いモンスーンに先立つ春季の中央アジアでは有意に地面温度が高いが、積雪偏差の有意性は小さかった。

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